離婚した相手が債務整理をしたとなると、返済義務が自分にまわって来るのではないか、養育費が支払われなくなるのでは、と不安に感じていませんか?
養育費の支払いを取り決めて離婚した相手が債務整理をした場合、養育費の支払いに影響はあるのか。また借金の返済義務があるのか。
今回は、離婚をした相手が債務整理をした場合に、養育費の支払いなど、他方に対してどのような影響を及ぼすかを中心に解説していきます。
- 離婚した相手が債務整理をしても返済義務はない
- 離婚した相手が債務整理をしても養育費の支払いに影響はない
- 書面で養育費の取り決めを行っていた場合、給料の1/2まで差し押さえることができる
離婚した相手が債務整理をしても、他方に返済義務はない
債務整理は、いずれも債務者の借金問題を解決するための手続きであり、対象となるのは、あくまで債務者自身が負っている借金です。
債務整理は債務者自身のためになされるものであるため、債務整理をしたことが他人に影響することは原則としてありません。
もっとも、主たる債務者が債務整理の手続きをとったことで、主たる債務者に代わって連帯保証人が返済をするよう債権者から請求されることがあるため、その意味では、連帯保証人に対しては影響が及ぶことになります。
このように、主たる債務者が債務整理をすると、連帯保証人に影響が及ぶ場合がありますが、それ以外の者に対して影響が及ぶことはありません。
このことは、離婚した相手が債務整理をした場合であっても、同じです。
たとえば、婚姻時に住宅ローンを組んで住宅を購入している場合において、他方が連帯保証人になっている場合には、連帯保証人にも住宅ローンを返済する義務があるため、相手が債務整理をしてしまうと、ローン会社から直接返済の請求を受けることになります。
しかし、他方が連帯保証人になっていない借金については、離婚した相手が債務整理をしたとしても、他方が返済義務を負うことはありません。
離婚した相手が債務整理をしても、養育費の支払いに影響はない
子どもの養育費の支払いについて相手と取り決めを交わして離婚をしたものの、その後、その相手が債務整理をすることになった場合、養育費の支払いはどのように扱われることになるのでしょうか。
結論からいうと、離婚した相手が債務整理をしても、養育費の支払いに影響はありません。
「養育費」は、子どもを育てるために必要な費用であり、一般的な借金とは性質が異なります。
親には子どもを育てる責任がある以上、債務整理をしたからといって、子どもを育てる責任を免除されるわけではありません。
そのため、離婚した相手が債務整理をしても、養育費は債務整理の対象から外されることになります。
もっとも、離婚した相手が債務整理をするということは、経済的に困窮しているということを意味します。
債務整理をすることにより、法的な意味での養育費の支払義務を免れることはできませんが、事実上、離婚した相手にお金がなくて、養育費の支払いを受けられなくなる可能性はあります。
この場合においても、支払いを受けられなかった養育費については、未払い分として金額が増えていくものの、決して、未払い分となった養育費について支払義務が消滅するわけではありません。
また、仮に、離婚した相手が職を失うなどして収入がなくなった場合には、養育費の支払いを受けられなくなる可能性が高いです。
養育費は、離婚した夫婦の双方の収入などに応じて、その支払額を決めることになります。
そのため、自分よりも相手の収入が低くなってしまった場合、相手から養育費の支払額の減額を申し入れられる可能性があります。
離婚した相手が養育費を支払わない場合でも支払わせる方法がある
離婚した相手が債務整理をしても、原則として、養育費の支払いに影響しません。
ですが、債務整理をする以上、経済的に厳しい状況であることに変わりはありません。
その結果、養育費の支払いを後回しにされたり、一切支払われなくなる可能性は否定できません。
このような場合に相手に養育費を支払わせるには、養育費の取り決めを書面にしていたかどうかで、その方法に違いが出てきます。
養育費の取り決めを書面にしている場合
調停や裁判によって、離婚が成立している場合には、調停調書や和解調書、判決等の中で、養育費の支払いについても定めを置いていることが少なくありません。
また、養育費の支払いについて、公正証書を作成していることもあります。
このような場合、これらの書面を債務名義として、相手の給料を差し押さえるなどして、養育費の支払いを受けることが可能です。
なお、通常の給料の差し押さえでは、相手の生活を考慮する必要もあるため、手取り額の1/4までしか差し押さえることができません。
ですが、養育費を支払ってもらうためになされる給料の差し押さえは、手取り額の1/2まで差し押さえることが可能です。
養育費の取り決めを書面にしていない場合
養育費の支払額について具体的な取り決めをしていない場合や具体的な取り決めはしたものの、その内容を書面にしていない場合は、相手から協力を得たうえで、養育費の支払いを内容とする書面(公正証書)を作成する方法があります。
相手が協力してくれない場合は、養育費の支払いを請求する調停を申立てるなど、裁判所を利用する方法もあります。
このような方法をとることによって、離婚をした相手に対し、一定のプレッシャーを与えることが期待でき、その結果、養育費を支払ってくるケースもあります。
このような過程を経てもなお、相手が養育費を支払わない場合は、相手の給料を差し押さえるなどして、養育費の支払いを受けることができます。
まとめ
離婚した相手が債務整理を行った場合でも、こちら側に返済義務がまわって来ることはありません。
また養育費に関しても影響は受けません。
万が一、養育費が支払われないことがあっても、給料を1/2差し押さえることができたりと、養育費の取り決めを書面にすることで養育費の支払いを続けさせることが可能になります。