債務整理で給料は差し押さえられてしまうの?
給料が差し押さえられてしまったら、生活はどうなる?と今後の生活を不安に感じる方もいるでしょう。
この記事では給料が差し押さえられる場合とタイミングについて、詳しく解説しながら、給料差し押さえを回避する方法なども併せて紹介していきます。
債務整理後の返済を滞納している方は、手遅れになる前に早急に対処が必要です。
- 給料差し押さえまでの過程:催促→一括請求→給料差し押さえ
- 給料の4分の1が差し押さえられる
- 早めの対処で給料差し押さえの回避ができる
給料差し押さえのプロセス
給料の差し押さえまでは様々な手続きがある
お金を借りた人(債務者)が借金の返済をしない場合、貸金業者などお金を貸した側(債権者)は、債務者の給料などの財産を差し押さえて貸したお金を回収する手段をとることがあります。
ただし、借金などの返済ができなかった場合でも、すぐに給料が差し押さえられるわけではありません。
借金の返済ができないと、まずは、電話や郵便で返済するように連絡が来るようになり(督促といいます)、この督促を放置していると、返済の一括請求がきます。
貸金業者などから一括請求を受けたら、すぐに連絡を取り、残りの返済方法について話し合いをして合意ができるといいのですが、放置してしまったり、話し合いをしても合意できない場合もあります。
一括請求を受けた後も返済ができないと、貸金業者などの債権者は、貸したお金を回収するため、法的手続きとして、「裁判」や「支払督促」を実施します。
そして、裁判や支払督促がきても対応しないままだと、判決や仮執行宣言付きの支払督促など、債権や債務の内容を公的に認める書面(債務名義)が作成されます。
ここまでくると、給料の差し押さえが実行されてしまいます。
差し押さえられる給料は全額ではない
給料は大切な生活費に充てられるものなので、最低限の生活を保障するために差し押さえ額には制限があります。
給料から年金や健康保険料などの社会保険料や税金などを差し引いた額(手取額)の4分の1が差し押さえられ、4分の3は手元に残ることになります。
ただし、給料から税金や社会保険料を差し引いた手取額が44万円を超える場合には、33万円だけが手元に残ります。
債務整理と給料の差し押さえの関係
債務整理では給料を差し押さえられることはない
特定調停、任意整理、個人再生、自己破産などの債務整理をしても、給料を差し押さえられることはありません。
給料が差し押さえられる前に、債務整理の手続きを開始し、債権者と交渉して返済についての合意ができれば、債権者も給料など債務者の財産を差し押さえる必要がなくなります。
むしろ、債務整理をしないで借金を滞納したままの方が、給料の差し押さえの可能性が高まります。
債務整理手続き開始後も法律事務所と連絡を取る
債務整理を法律事務所の専門家に依頼すると、まず、貸金業者などの債権者に対して受任通知(介入通知)を送り、手続きが始まります。
受任通知が送られると督促がストップしますが、この状態のまま数か月交渉が進まないと、債権者が差し押さえにつながる法的手続きを取ってくる可能性もあります。
弁護士などが手続きを進めないということはありませんが、万が一でもこのような事態が起きることを防ぐため、進捗状況の確認など法律事務所との連絡はしっかりとりましょう。
給料の差し押さえを回避する方法
給料の差し押さえを債務整理が原因で実行されることはありませんが、借金の返済ができないことが問題です。
給料が差し押さえられると、生活費の問題だけではなく、家族や勤務先に知られ信用問題にも関わります。
計画的な返済を心がけ、返済に困ったら債務整理を検討しましょう。
給料の差し押さえを回避する方法
個人再生で給料の差し押さえを回避する
給料の差し押さえを止める方法として、債務整理のうちの個人再生手続きがあります。
個人再生の申立をし、裁判所から「個人再生開始手続き決定」が出されると、強制執行が解除され、給料の差し押さえも止めます。
ただし、個人再生の認可決定が出されるまでは、差し押さえ対象の給料は、勤務先が一時保管するか、法務局に供託されます。
正式に個人再生の手続きが完了すれば、給料全額を受け取ることができます。
自己破産で給料の差し押さえを回避する
給料の差し押さえを止める方法として、債務整理のうちの自己破産手続きをする方法もあります。
自己破産には、「同時廃止」と「管財事件」があり、同時廃止か管財事件かどちらの扱いになるかは、裁判所により決められます。
同時廃止とは、財産がほとんどない場合に、財産の処分を行わずに破産手続きをするものです。
同時廃止による自己破産の場合は、「破産手続き開始決定」により、強制執行が解除され、給料の差し押さえが止まります。
ただし、「破産手続き開始決定」により給料の差し押さえが止まっても、自己破産による「免責許可決定」が出されるまでは、差し押さえ対象の給料は、勤務先が一時保管するか、法務局に供託されます。
給料全額を受け取るのは、無事自己破産の手続きが完了し免責許可決定が出てからになります。
なお、破産手続き開始決定から免責許可決定までの期間は、おおよそ2,3か月です。
管財事件とは、一定以上の財産がある場合に、財産を調査して現金化(換価)し、貸金業者などの債権者に配分する破産手続きです。
管財事件の取り扱いは各地方裁判所により若干異なりますが、おおよそ99万円以上の財産がある場合に管財事件となります。
管財事件による自己破産の場合は、「破産手続き開始決定」により、強制執行の効力自体が失われます。
したがって、管財事件の場合には、同時廃止の場合と異なり、破産手続き開始決定後は、すぐに給料全額を受領できるようになります。
任意整理での差し押さえ回避は債権者次第
任意整理では、裁判所を通さず、債権者との交渉により解決するので、債権者が差し押さえの解除に合意しなければ、給料の差し押さえは継続します。
個人再生や自己破産などの裁判所を通した手続きを検討しましょう。
いずれにしても、給料を差し押さえられる前に債務整理などの対応をしておくのが大切です。
まとめ
返済の滞納しない限り、債務整理で給料が差し押さえられることはありません。
給料が差し押さえられても4分の1なので、生活費に支障が出ることはほとんどありません。
債務整理後に返済ができなくなることもあると思いますが、対処が遅くなればなるほど、自分にとって不利な方向へ進んでしまうので、早急な対応を心がけましょう。