債務整理

債務整理中に債権者の追加はできる?

発覚

債務整理中に一部の債権者の漏れが生じていることが発覚したり、やっぱり債務整理をする債権者を追加したいと思うこと、ありますよね。

特に債権者の数が多く、全ての債権者を把握できていない場合、債務整理申請中やまたは申請後に発覚してしまうという事例もあります。

基本的に債務整理中の債権者を追加することは可能です。

債務整理の種類・タイミングによって、手続き方法が変わってきますので、注意が必要です。

今回は債務整理の種類、そしてタイミングによる債権者の追加方法についてまとめました。

注意点なども合わせて解説していますので、是非参考にしてください。

 

この記事をまとめると
  • 債務整理中でも債権者は追加可能だが、債務整理の種類により方法が異なる
  • 任意整理は自由に追加可能
  • 個人再生は再生手続開始決定前後で手続きが異なる
  • 自己破産は免責許可決定前後で手続きが異なる

債務整理中であっても債権者は追加できる

追加

債務整理には主に、任意整理、個人再生、そして、自己破産の3つの手続きがあります。

いずれも借金問題を解決するための手続きであるという点では共通していますが、解決の仕方や手続きの流れなどにおいて、それぞれには違いがあります。

基本的には、債務者が借入れをしているすべての債権者が手続きの対象となりますので、少なくとも債務者がすべての債権者を把握していることが前提となります。

ですが、債権者の数が多く一部の債権者に漏れが生じていたり、当初は対象に含めていなかったものの、事後に債務整理の必要性が生じる場合があります。

このような場合、既に手続きに入っていたとしても、後から債権者を追加することは可能ですが、手続きの種類によって、追加の方法や手続きに違いがあります。

 

任意整理では原則として自由に追加できる

任意整理は、個人再生や自己破産のように裁判所を通さずに、借金を整理する債権者を選ぶことが可能な手続きです。

そのため、手続きに対する制約も比較的緩くなっており、基本的には、債権者が任意整理をすることに応じてくれさえすれば、後から債権者を追加することも可能です。

もっとも、債権者を追加する際には、注意しなければならない点もあります。

大口の債権者である場合

一つ目は、追加しようとしている債権者が、大口の債権者である場合です。

この場合、債務者の返済計画次第では、大口債権者が任意整理に応じてくれない可能性もあるため、個人再生や自己破産も視野に入れて、改めて債務整理の方法を検討する必要があります。

日常的に利用している債権者である場合

二つ目は、追加しようとしている債権者が、クレジットカード会社や銀行などのように、日常的に利用している債権者である場合です。

この場合、債権者として債務整理に追加すると、カード類が使えなくなったり、預貯金と相殺されることになります。

そのため、債権者を追加する前に、それまでクレジットカード払いとしていた支払いを口座振替に変更したり、預貯金を引出しておくなどの対応が必要になります。

 

個人再生では手続きの中で追加できる

請求書

個人再生は、任意整理のときのように、整理する債権者を自由に選ぶことはできず、すべての債権者が手続きの対象となります。

そのため、基本的には、あとから債権者を追加するという事態にはなりませんが、一部の債権者が漏れていて、債権者を追加する必要が生じるケースも皆無であるとはいえません。

債権者を追加する場合の手続きは、再生手続開始決定が出ているかどうかで変わってきます。

 

再生手続開始決定前

再生手続開始決定が出る前であれば、債権者一覧表を訂正する形で債権者を追加することができます。

裁判所によって多少の違いはありますが、東京地方裁判所であれば、個人再生の申立てから再生手続開始決定が出るまでには1ヶ月程度の時間がかかります。

そのため、この間に債権者の漏れなどが判明した場合は、債権者一覧表を訂正することで債権者を追加することができます。

 

再生手続開始決定後

再生手続開始決定が出ると、裁判所は、すべての債権者に対して、再生手続開始決定の通知書をはじめ、債権者一覧表などを送付します。

そのため、開始決定後に債権者一覧表を訂正することを許してしまうと、訂正がされる都度に、訂正後の債権者一覧表を送り直さなければならなくなるなど、手続きに与える影響も大きいです。

このような理由で、再生手続開始決定が出た後に、債権者一覧表を訂正することはできません。

もっとも、再生手続開始決定が出た後であっても、債権者を追加する方法はあります。

一つ目は、追加しようとする債権者から裁判所に対し、債権の届出期限までに債権を届け出てもらう方法です。

また、債権者が、債権の届出期間までに債権を届け出ることができなかった場合であっても、届け出ることができなかった理由が債権者の落ち度によるものでなければ、一定の期間、債権を届け出ることができます。

とはいえ、債権者の漏れが遅い時期に判明すると、以上のような方法で債権者を追加することもできなくなります。

このように、手続きから完全に漏れてしまった債権は、「無届債権」として取り扱われることになります。

無届債権については、無届となったことにつき、債務者と債権者のどちらに落ち度があるかによって、手続きでの取扱いが変わります。

債務者に落ち度がある場合には、債権の認否までに「自認債権」として取り扱うことにより、債権者を追加することができます。

反対に、債権者に落ち度がある場合には、「債権の劣後化」という扱いを受けることになります。

ここでいう「債権の劣後化」とは、簡単にいうと、他の債権者より返済を後回しにされることを意味します。

そのため、認可された再生計画案に沿った返済が終わった後に、再生計画案と同一の条件で返済が開始されるため、実際に返済が開始されるのは、認可決定後、3年~5年が経過した後ということになります。

 

自己破産では手続きの中で追加できる

裁判所を通す自己破産において、債権者を追加するための手続きは、基本的に個人再生の場合と類似しています。

債権者を追加する場合の手続きは、免責許可決定が出ているかどうかで変わってきます。

 

免責許可決定前

債権者を追加する旨の上申書を裁判所に提出したうえで、債権者一覧表を訂正することで、債権者を追加することができます。

 

免責許可決定後

自己破産手続きは、免責許可決定からおよそ1ヶ月が経過すると、免責許可決定が確定して自己破産の手続きは終結します。

免責許可の効力は、債権者一覧表に記載されている債権者に対してのみ及ぶものとされています。

そのため、免責許可が確定してしまうと、その後に債権者を追加することはできず、免責許可が確定するまでに、債権者を追加することが必要になってきます。

この点、債権者の漏れが破産者の故意・過失によるものである場合、免責許可決定の確定前であっても、債権者を追加することはできないとされています。

このような場合には、債権者に免責許可決定を示すなどして、自己破産をしたことを理解してもらうほかありません。

自己破産をしている以上、少なくとも破産者に支払能力がないことは伝わるため、それでも返済を求めてくる債権者は少ないと考えられます。

まとめ

債務整理中に債権者の漏れが発覚した場合や経済状況などの理由から債務整理をする債権者を追加したい場合、後から債権者の追加をすることは基本的に可能です。

状況やタイミングによって、対処法が変わってきますので、発覚した場合や状況が変わった場合は、早急に弁護士に相談することが大切です。

個人再生や自己破産は基本的に債務整理をする債権者を選ぶことはできないので、申請を行うタイミングで漏れがないか慎重に確認してみてください。