事業がうまくいかず、借金が返済できない…とお悩みではないですか?
個人事業主の場合、事業の状況によってどの債務整理を選択するかを決めなければなりません。
今回は自己破産・個人再生・任意整理のぞれぞれのメリット・デメリットを紹介しながら、どういった場合にどの手続きを選択すればいいのかを詳しく解説していきます。
- 個人事業主でも債務整理が可能
- 自己破産の場合:事業の継続は難しい
- 個人再生の場合:無理のない返済と事業の継続の両立が可能
- 任意整理の場合:事業の実績に応じて柔軟・迅速に債務整理ができる
個人事業主であっても債務整理は可能
債務整理とは、債務(借金)を減額・免除するための手続きですが、一般的な個人だけではなく、個人事業主であってももちろん利用することができます。
一般的な個人の場合では、ギャンブルや浪費など、性格や意識の問題が多重債務の原因であることも多いですが、個人事業主の場合は、一生懸命ビジネスを運営していても、借金返済に手が回らなくなってしまうことはあり、債務整理は個人事業主の誰にでも起こりうるものなのです。
個人事業主は、多くの場合、事業を始める際に多額の初期費用が必要になるため、金融機関から融資を受ける可能性が高く、また、売上が掛け(その場で現金で支払われるのではなく、例えば翌月末日まで支払いが猶予されるような支払方法)で支払われることが一般的であるため、その売掛金を回収するまでの間の現金のやりくりのために、借金をしなければいけないことがあります。
売上はあがっているのに、現金が実際に手元に入ってくるのが先になってしまうため、家賃や仕入の支払いなどに追われてお店をたたむ例は少なくありません。
このような原因から、個人事業主の方は多重債務に陥ってしまいます。
それでは、債務整理を行わなければいけなくなってしまった際に、個人事業主が取りうる選択肢を解説していきましょう。
なお、債務整理の詳細については下記の記事をご覧ください。
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個人事業主が取りうる債務整理の主な選択肢3つ
自己破産
債務の額が利益と比較して非常に大きく、返済できる見込みがないのであれば、取りうる選択肢は自己破産になるでしょう。
メリット
- 債務が基本的に全額免除される。
- また一から再スタートできる。
デメリット
- 店舗が持ち家あれば店はもちろん、事業に必要なほぼすべての設備などを失ってしまう。
- 未回収の売掛金が多いと管財事件となり、多額の予納金が必要になり、手続期間も長期化する可能性あり。
- ブラックリストに載る。
自己破産手続きで免責の許可を受ければ、税金等の支払いを除きすべての債務が免除されるため、一度すべてを清算して、また新しいビジネスをスタートさせることができます。
しかし、店や設備をすべて失うことになるため、これまでの事業を同じように継続することは難しいかもしれません。
また、上述した売掛金は個人事業主にとって資産となるため、破産手続きの中で、破産者の資産が多い場合に選択される「管財事件」になり、手続きを進めるためには、財産額に応じて数十万円~数百万円もの予納金を納めなければならず、また手続き完了までの期間も1年以上と長期化する可能性があります。
また、これは自己破産、個人再生、任意整理すべてにあてはまるデメリットですが、債務整理を行うと、信用情報機関に事故情報として登録され、以後借り入れやクレジットカードの発行が5年程度できなくなります。
新たに融資してもらうことが難しくなるため、事業を再開・拡大していく際の足かせになってしまいます。
個人再生
自己破産と同じく裁判所における手続きですが、一定の利益があり、借金返済の見込みが立つ場合には、財産を手放す必要はないが債務を減額させることができる、個人再生が選択肢になるでしょう。
メリット
- 債務を最大10分の1まで減額できる。
- すべての財産を失うことはない。
デメリット
- 未回収の売掛金が多いと、最低返済額は多額になる可能性あり。
- ブラックリストに載る。
個人事業主を対象として小規模個人再生手続が制度として用意されており、すべての債権者との間の借金の合計額を減額させ、残りの借金を裁判所が認めた返済計画(原則3年程度)に従って返済できます。
財産を強制的に売却されることもないため、無理のない返済と事業の継続を両立できます。
ただ、小規模個人再生手続においては、持っている財産すべての合計価格などが最低返済額となり、それ以外の部分を減額することになるため、資産である売掛金が多い場合には、減額幅が小さくなり、十分なメリットを受けられない可能性があります。
任意整理
一定の利益があり、借金総額を5年程度の分割であれば返済できるという場合には、任意整理が一般的な方法になるでしょう。
メリット
- 裁判所が関与しない手続きであるため、迅速に手続きができる。
- 取引上、関係を壊したくない債権者は対象から除外するなど、任意に債権者を選択して債務整理を行うことができる。
デメリット
- 借金元本の免除や減額は見込めないので、効果は限定的。
- ブラックリストに載る。
自己破産や個人再生では、全ての債権者を一括して手続きするため、事業上重要な取引先に借金をしている場合には信用を失い、今後の事業への影響は避けられませんが、任意整理はあくまでに裁判外の任意な交渉になりますので、それぞれの事業の実情に応じて柔軟に、かつ迅速に債務整理を行うことができます。
しかし、裁判外である分効果は限定的で、将来利息の免除や返済期間の延長などに留まります。
ただ、売掛金の回収が先になるため、一時的にキャッシュが不足して立ちいかない、といった個人事業主特有の原因がある場合には、将来利息の発生を止めた上で返済を猶予してもらうことができる任意整理は、債務整理を考える際にはまず始めに検討すべき方法であると言えます。
まとめ
個人事業主でも債務整理をすることができます。
個人事業主の場合、利益と借り入れを比較し、その差に応じた債務整理手続きの選択が必要になります。
任意整理・個人再生の場合、事業を続けられる可能性がありますが、自己破産になると事業を続けていくことが極めて難しくなります。
自分にあった債務整理の選択ができるように、自分自身でもメリット・デメリットや特徴を理解していくことが大切です。