債務整理をすると保険は解約しなければいけないの、と不安に思っていませんか?
債務整理で保険を解約する必要がある場合とない場合があります。
この記事では債務整理の手続きそれぞれの場合に保険の解約が必要になるのかを詳しく解説していきます。
- 債務整理では解約返戻金の多い保険が問題になる
- 任意整理では保険の解約は必要なし
- 個人再生で保険の解約返戻金が20万円を超える場合は注意
- 自己破産の同時廃止は保険を解約する必要はない
- 自己破産の管財事件は解約返戻金相当額が20万円以下の場合解約しなくて良い
債務整理で問題となるのは保険の解約返戻金
解約返戻金がある保険と解約返戻金の無い保険
保険期間の途中で保険契約を解約したときに支払われるものを解約返戻金といいます。
保険の種類により、解約返戻金がある場合と無い場合、もしくは少ない場合があります。
一般的に、掛け捨て型保険といわれるものは、死亡や入院、手術などの保障を重視していて、解約返戻金が無い又はあってもごくわずかになります。
また、積立型(貯蓄型)保険は、解約返戻金や満期保険金(保険が満期になると支払われるもの)がある保険です。
死亡などの保障以外に満期保険金がある養老保険や、一定額を長期間にわたって積み立てて解約返戻金や満期保険金が支払われる終身保険や学資保険などがあります。
債務整理では解約返戻金の多い保険が問題になる
債務整理で問題となるのは、保険が財産とみなされる場合です。
保険を解約した場合に一定の解約返戻金がある場合には財産価値があるとみなされ、債務整理をする場合に保険の解約をしなくてはならないなどの影響があることがあります。
ただし、債務整理の種類によっては、全く影響がないものもありますし、影響がある場合でも影響の仕方は異なります。
債務整理の保険への影響
任意整理による保険への影響
任意整理は、裁判所の手続きを通さず、貸金業者等の債権者との交渉により、支払金額の減額や支払い方法の変更などを決めることができる債務整理です。
信用情報機関に債務整理の情報が登録されることから、クレジットカードが作れない、新たにローンを組めないなどの問題はあるものの、財産を処分しなくてはならないということはありません。
資金繰りのため、自らの意思で保険を解約するという手段をとることもあると思いますが、任意整理をするために保険を解約しなくてはいけないということはないといえます。
個人再生による保険への影響
個人再生とは、一定の収入の見通しのある人が、返済金額を5分の1などと大幅に減らし、3年間又は5年間の期間で計画的に返済することができる債務整理です。
個人再生の場合も、財産の処分を強制されることはありません。
ただし、個人再生には、「清算価値保証の原則」というものがあるので注意が必要です。
清算価値保証の原則とは、不動産、預金、保険などの財産を所有している場合、返済総額が清算価値(破産の手続きをしたとした場合に、債権者に分配される財産の総額)以上になるようにするというものです。
例えば、債務が減額されて返済額を200万円にできる場合でも、不動産、預金、保険などの財産の総額が300万円相当以上になる場合には、返済金額も300万円以上になります。
すべての保険をこの清算価値の金額に加えるわけではありませんが、解約返戻金が20万円を超える場合には清算価値の金額に含むのが一般的です。
保険の解約返戻金が20万円を超える場合には、清算価値の金額を増加させるため、返済金額も増える可能性があることに注意しなくてはいけません。
同時廃止による自己破産の場合の保険への影響
自己破産は、全ての債務を免除する代わりに、持ち家や自動車などの財産を失うことになる債務整理の手続きです。
自己破産には、「同時廃止」と「管財事件」があります、
同時廃止とは、財産がほとんどない場合に、財産の処分を行わずに破産手続きをするもので、保険を解約する必要がありません。
管財事件による自己破産の場合の保険への影響
自己破産には、「同時廃止」と「管財事件」がありますが、管財事件とは、一定以上の財産がある場合に、財産を調査して換価(現金化)し、貸金業者などの債権者に配分する破産手続きです。
この場合、全ての財産のうち、債務者の生活を保障するための財産を除いた額が債権者に配分されますが、保険については、解約返戻金相当額が20万円を超える場合に、解約して配分することになります。
つまり、掛け捨て型の保険など解約返戻金が20万円以下のものは、解約せずに手元に残すことが可能です。
また、解約返戻金が20万円を超える場合でも、保険契約を解約できない理由がある場合には、解約する代わりに解約返戻金相当の現金を支払うと、保険を解約しなくてすみます。
解約できない理由としては、現在契約している保険を解約して新しい保険に入りなおすと保険料が高くなり損失が発生する場合、持病があり保険契約を解約してしまうと再度契約するのが難しい場合などが想定されます。
保険契約を解約できない理由があっても、解約返戻金相当額を用意できないこともあります。
この場合には、裁判所に「自由財産の拡張」を申し出ます。
自由財産とは、債務者の手元に残すことが認められる財産で、現金99万円や差し押さえが禁止された生活必需品など、法律で定められたものが対象です。
この法律で認められた自由財産以外にも拡張して自由財産として債権者の手元に残るようにすることを「自由財産の拡張」といいます。
保険を解約できない事情があり、解約返戻金相当額を支払えない場合には、裁判所に自由財産の拡張を申し出て認められれば、解約返戻金が20万円を超える保険であっても解約しないですみます。
債務整理後の生命保険への影響
債務整理後に保険契約を締結することは可能です。
保険の審査は、健康状態などの告知や健康診断などにより行われ、信用情報機関に対する金融事故情報の照会はありません。
保険料を支払えるのであれば、債務整理後でも保険契約の締結が可能です。
まとめ
基本的に債務整理において問題になるのは解約返戻金の多い保険です。
任意整理の場合、保険の解約は必要ありません。
個人再生の場合も保険の解約は必要ありませんが、「清算価値保証の原則」により、20万円を超える場合は注意が必要です。
自己破産は「管財事件」のみの場合、解約返戻金20万円以上の保険の解約が必要になります。
債務整理を考えている方は、保険の解約返戻金が20万円以上あるか確認を行うようにしましょう。